就業規則 情報

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ノイズ研究所事件 就業規則の不利益変更



判例のポイント:
就業規則(給与規程)の変更により、年功的職能資格制度による賃金制度から成果主義による賃金制度(職務給)に変更するという賃金制度の変更に関し、合理性があるかどうかであるが、合理性があるとされたもの

前提となる事実のうち重要なもの
・旧賃金制度の基本給は年齢給と職能給により構成されており、年齢給は年齢給表により昇給し、職能給は満55歳に達した従業員については人事評価の結果等により等級の格付けを見直すものとされていたが、それ以外はいったん到達した等級が引き下げられることは予定されておらず、変更前給与規程等に従業員の到達した等級が見直しにより引き下げられることがあり得ることを定めている規定はなかった。
 昇格基準は年功序列の運用がされており、各資格等級が40号俸に細分化され、在職1年毎に昇格がなくても1号法は上がるような運用が行われていた。
・企業の営業利益は、平成8年6,065万2,000円であったが、以後4年間にわたり減少し、平成12年には269万1000円にまで落ち込んだ。税引き前損益は、平成11年に1億576万7000円の損失、同12年には1億6068万円5000円の損失となった。
・上記のような経営状況の中で、事業の3本の柱とする展望を描き、組織と個人の実績に見合った報償でインセンティブを与えることにより若く積極的な従業員の活従業員の到達した等級が見直しにより引き下げられることがあり得ることを定めている規定はなかった。
 昇格基準は年功序列の運用がされており、各資格等級が40号俸に細分化され、在職1年毎に昇格がなくても1号法は上がるような運用が行われていた。
・企業の営業利益は、平成8年6,065万2,000円であったが、以後4年間にわたり減少し、平成12年には269万1000円にまで落ち込んだ。税引き前損益は、平成11年に1億576万7000円の損失、同12年には1億6068万円5000円の損失となった。
・上記のような経営状況の中で、事業の3本の柱とする展望を描き、組織と個人の実績に見合った報償でインセンティブを与えることにより若く積極的な従業員の活力を引き出して企業の業績を好転させるなどして早期に技術ノウハウの開発が可能な企業を目指すこととした。
・従業員への周知および新賃金制度の内容については、平成12年12月1日付で「賃金制度改訂について」と題する書面を交付し、その概要は、基本給が年齢給と職務給で構成されること。年齢給は30歳まで昇給し、30歳以降は60歳まで同額、8等級以上の従業員については年齢給は支給しないこと、職能給を廃止して職務給にすること、職務給制度とは仕事の難易度や責任の重さに応じて賃金を決める制度であり、社内の各職務を1等級から10等級までにランク分け、格付けし、職務に応じた職務給を支給すること、各職務のランク分けは今後作成される職務分掌をもとに決定されること、職務の1等級から7等級までは下限額と上限額を定めた範囲給とし、人事評価の結果により昇給号俸が異なること、人事評価に関しては1等級から7等級までの者に関しては業績目標達成度、職務遂行能力達成度とそのプロセスを併せ評価されること、8等級以上の者は業績目標達成度、職務遂行達成度により行われること、昇給は評価により行わない場合や等級の号俸は上限が設定されておりそれ以上等級内で昇給はないこと、昇格加給のみならず降格減給があること、新賃金制度への移行に伴い、基本給が減額となる者については、移行時に従前額を下回らないよう調整手当を支給すること、調整手当の支給は最長2年間とし、1年毎に50%を償却すること。
上記書面において、平成13年2月9日までに関連する規程等の改定を行い、同年2月末日までに従業員代表の意見の提出を求めるというスケジュールが示されている。
・新賃金制度においては、地域手当は廃止された。
・平成13年4月2日当時の控訴人の従業員は、総勢95名であり、新規採用された者を除くと賃金総額は143万6400円増額された。
・91名のうち、14名は賃金が減額されたが他の77名は賃金が増額された。

ノイズ研究所事件の見解
 就業規則の不利益変更に対する過去の判例を踏襲し、すなわち、「新たな就業規則の作成又は変更によって労働者の既得の権利を奪い,労働者に不利益な労働条件を一方的に課することは,原則として許されない。しかし,労働条件の集合的処理,特にその統一的かつ画一的な決定を建前とする就業規則の性質からいって,当該規則条項が合理的なものである限り,個々の労働者において,これに同意しないことを理由として,その適用を拒むことは許されない。そして,当該規則条項が合理的なものであるとは,当該就業規則の作成又は変更が,その必要性及び内容の両面からみて,それによって労働者が被ることになる不利益の程度を考慮しても,なお当該労使関係における当該条項の法的規範性を是認することができるだけの合理性を有するものであることをいい,特に,賃金,退職金など労働者にとって重要な権利,労働条件に関し実質的な不利益を及ぼす就業規則の作成又は変更については,当該条項が,そのような不利益を労働者に法的に受忍させることを許容することができるだけの高度の必要性に基づいた合理的な内容のものである場合において,その効力を生ずるものというべきである。上記の合理性の有無は,具体的には,就業規則の変更によって労働者が被る不利益の程度,使用者側の変更の必要性の内容・程度,変更後の就業規則の内容自体の相当性,代償措置その他関連する他の労働条件の改善状況,労働組合等との交渉の経緯,他の労働組合又は他の従業員の対応,同種事項に関する我が国社会における一般的状況等を総合考慮して判断すべきである」と判断の方向性を示しています。そのうえで個別に該当性を判断されています。
 まず、就業規則の不利益変更にあたるかどうかについては、「新賃金制度の下では,従業員の従事する職務の格付けが旧賃金制度の下で支給されていた賃金額に対応する職務の格付けよりも低かった場合や,その後の人事考課査定の結果従業員が降格された場合には,旧賃金制度の下で支給されていた賃金額より顕著に減少した賃金額が支給されることとなる可能性があること,以上のとおり認めることができる。本件給与規程等の変更による本件賃金制度の変更は,上記の可能性が存在する点において,就業規則の不利益変更に当たるものというべきである。」ということです。つまり、賃金が制度変更により下回る可能性が1人でもあればそれは就業規則の不利益変更になり、合理性の有無を判断することになります。
 変更の必要性については、「主力商品である電磁環境両立性試験機の市場がグローバル化し,日本国内において海外メーカーとの競争が激化して,売上げ,営業利益が減少し,税引き前損益が損失に転じたという経営状況の中で,事業の展望を描き,組織や個人の実績に見合った報奨でインセンティブを与えて積極的に職務に取り組む従業員の活力を引き出すことにより労働生産性を高めて控訴人の競争力を強化し,もって,控訴人の業績を好転させるなどして早期に技術ノウハウの開発が可能な企業を目指すこととして,賃金制度の変更を検討することとしたというのであり,これによれば,本件賃金制度の変更は,控訴人にとって,高度の経営上の必要性があったということができる」と認めています。
 賃金制度の変更の内容については、「本件賃金制度の変更は,従業員に対して支給する賃金原資総額を減少させるものではなく,賃金原資の配分の仕方をより合理的なものに改めようとするものであり,また,個々の従業員の具体的な賃金額を直接的,現実的に減少させるものではなく,賃金額決定の仕組み,基準を変更するものであって,新賃金制度の下における個々の従業員の賃金額は,当該従業員に与えられる職務の内容と当該従業員の業績,能力の評価に基づいて決定する格付けとによって決定されるのであり,どの従業員についても人事評価の結果次第で昇格も降格もあり得るのであって,自己研鑽による職務遂行能力等の向上により昇格し,昇給することができるという平等な機会が与えられているということができるから,新賃金制度の下において行われる人事考課査定に関する制度が合理的なものであるということができるのであれば,本件賃金制度の変更の内容もまた,合理的なものであるということができる。」としています。
人事考課査定に関する制度について検討すると,「控訴人における人事評価制度は本件賃金制度の変更の前後を通じて評価の主体,評価の方法,評価の基準が前記のとおりであり,これらの点に加え,旧賃金制度下において行われていた人事考課の訓練と少なくとも同程度の人事考課の訓練が新賃金制度下においても行われているものと推認されることを併せて考えると,控訴人における人事評価制度は,本件給与規程等の変更の合理性を判断するに当たり人事評価制度の合理性として最低限度必要とされる程度のものは,これを備えているということができる(もっとも,控訴人における人事評価制度は,前記認定の限度にとどまるものであるとすれば更に改善されることが望ましく,仮に新賃金制度下における人事評価に裁量権の逸脱,濫用があったことを理由とする損害賠償請求訴訟が提起された場合には,具体的な不法行為の審理の過程で人事評価制度の内実が改めて吟味されることになると考えられる。)。したがって,本件賃金制度の変更の内容もまた,上記の経営上の必要性に対処し,見合ったものとして相当なものであるということができる。」とされています。前提として何により従業員を格付けするかは、経営上の裁量であるとされています。従いまして、賃金制度を変更する際は、企業は何により従業員を格付けするのかを明確にする必要があります。また、ここでの最大のポイントは賃金原資総額を減少させていないということであり、賃金額決定の仕組み、基準を変更するということ、自己研鑽により昇格し、昇給することができる平等な機会を与えるということになります。そして、人事考課査定に関する制度が合理的なものであれば新賃金制度の変更も合理的であるとされていることから、人事評価制度の合理性も確認しておく必要があります。評価訓練にも言及していますから、評価訓練についても整備しておくことが重要です。
 「賃金制度の変更に当たり,あらかじめ従業員に変更内容の概要を通知して周知に努め,被控訴人らの所属する組合との団体交渉に応じ,協議を通じて・・・・この労使の交渉の経過も,本件給与規程等の変更の合理性を基礎付ける事実であるということができる。」とあり、誠実に交渉することに対するよい例ではないかと考えられます。
 本件賃金制度の変更に際して採られた経過措置は,制度変更の1年目は差額に相当する調整手当を全額支払うが,2年目は50%だけであり,3年目からはこれがゼロとなるというものであって,本件賃金制度の変更により支給される賃金額が顕著に減少する従業員についても特別な緩和措置が設けられておらず,被控訴人らについても上記の経過措置がそのまま適用されたことが認められる。しかしながら,本件賃金制度の変更が旧賃金制度の年功型賃金体系を大幅に改定するものであることにかんがみると,経過措置は実情に応じて可能な範囲で手厚いものであることが望ましいのであり,本件賃金制度の変更の際に実際に採られた経過措置は,いささか性急なものであり,柔軟性に欠ける嫌いがないとはいえないのであるが,それなりの緩和措置としての意義を有することを否定することはできない。ここで考えられる一つとして、賃金額の減少についてあるラインを引き、そのラインにより経過措置ここでは調整給の取扱いを変えることがあります。
 そしてこれらを総括して次のように判断しております。「以上によれば,本件給与規程等の変更による本件賃金制度の変更は,新賃金制度の下で従業員の従事する職務の格付けが旧賃金制度の下で支給されていた賃金額に対応する職務の格付けよりも低かった場合や,その後の人事考課査定の結果従業員が降格された場合に,旧賃金制度の下で支給されていた賃金額より賃金額が顕著に減少することとなる可能性があり,この点において不利益性があるが,控訴人は,主力商品の競争が激化した経営状況の中で,従業員の労働生産性を高めて競争力を強化する高度の必要性があったのであり,新賃金制度は,控訴人にとって重要な職務により有能な人材を投入するために,従業員に対して従事する職務の重要性の程度に応じた処遇を行うこととするものであり,従業員に対して支給する賃金原資総額を減少させるものではなく,賃金原資の配分の仕方をより合理的なものに改めようとするものであって,新賃金制度は,個々の従業員の賃金額を,当該従業員に与えられる職務の内容と当該従業員の業績,能力の評価に基づいて決定する格付けとによって決定するものであり,どの従業員にも自己研鑽による職務遂行能力等の向上により昇格し,昇給することができるという平等な機会を保障しており,かつ,人事評価制度についても最低限度必要とされる程度の合理性を肯定し得るものであることからすれば,上記の必要性に見合ったものとして相当であり,控訴人があらかじめ従業員に変更内容の概要を通知して周知に努め,一部の従業員の所属する労働組合との団体交渉を通じて,労使間の合意により円滑に賃金制度の変更を行おうと努めていたという労使の交渉の経過や,それなりの緩和措置としての意義を有する経過措置が採られたことなど前記認定に係る諸事情を総合考慮するならば,上記のとおり不利益性があり,現実に採られた経過措置が2年間に限って賃金減額分の一部を補てんするにとどまるものであっていささか性急で柔軟性に欠ける嫌いがないとはいえない点を考慮しても,なお,上記の不利益を法的に受忍させることもやむを得ない程度の,高度の必要性に基づいた合理的な内容のものであるといわざるを得ない。したがって,本件給与規程等の変更は,被控訴人らに対しても効力を生ずるものというべきである。」
新賃金制度の下における被控訴人らの格付けの違法性について、「被控訴人らは,本件賃金制度の変更時に従事していた職務内容によって職務給の号俸を決定されたのであり,各被控訴人が担当する職務は使用者である控訴人がその裁量によってこれを担当する旨の決定をしたものであって,各被控訴人が自らは上記決定に関与することができないにもかかわらず,当該職務内容によって最も重要な労働条件を左右されることになるのであって,このようなことは不合理であり,仮にこのような賃金制度に何らかの合理性が認められるとすれば,それは本件賃金制度の変更後の一定期間について従業員の努力,成果を評価し,その評価に基づき賃金額を調整するという限りにおいてであると主張する。」に対し「・・・新賃金制度における職務給制度は,控訴人が,経営上の判断に基づき,経営上の柱となると位置付けた業務との関係において,個々の従業員の取り組む職務を重要性の観点から区別し,重要な職務に有能な人材を投入するために,職務の重要性の程度に応じた処遇を行うこととするものであり,何を経営上の柱となる業務と位置付けるか,当該業務との関係において具体的な職務を重要性の観点からどのように区別するか,誰をどの職務に従事させるかについては,事柄の性質上控訴人の経営上の裁量的な判断にゆだねられているものということができる。したがって,被控訴人らが主張するところは,本件賃金制度の変更により職務給制度が導入されたことの帰結にほかならないのであり,本件給与規程等の変更に合理性があるかどうかの判断次第で決着が付く問題であるというべきである。」としており、簡単にいうと、職務により賃金が変わる職務給になり、その変更当時の職務により等級が決定されその職務は使用者がの裁量で決定されたものだから不合理であり、一定期間の評価をもって格付けする必要があるとの主張をこれらは経営上の裁量で判断されるべきものであり、賃金制度の変更自体が合理的なものであればそれに従うとしています。また、ここでは紹介していませんが、誰をどの職務につけるかも経営上の裁量権の一つであるとしています。






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